NISAって相続できる?資産承継と投資の新たな可能性

ISA(少額投資非課税制度)は、個人投資家の資産形成を後押しする制度として注目を集めています。しかし、NISAを利用している人が亡くなった場合、その資産はどのように扱われるのでしょうか。この記事では、NISAと相続の関係、資産承継における注意点について解説します。

 

NISAの基本と2024年からの変更

NISAは2014年に導入され、2024年からは大幅に拡充されます。新制度の特徴を理解することは、資産形成と相続対策の両面で重要です。

 

NISAとは何か

NISAは、年間の投資枠内で購入した上場株式や投資信託の配当金や売却益が非課税となる制度です。個人投資家の資産形成を促進し、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる目的で導入されました。

 

2023年までのNISAでは、一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、それぞれ年間120万円、40万円の非課税投資枠が設定されていました。これらは別々の制度として運用されており、投資家はどちらか一方を選択する必要がありました。

 

新NISAの特徴と拡充された非課税枠

2024年からスタートする新NISAでは、制度が一本化され、より柔軟な投資が可能になります。新制度では「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、両方を併用することが可能です。

 

成長投資枠の年間投資上限額は240万円、つみたて投資枠は120万円となり、合計で年間360万円まで非課税で投資することが可能となります。これは旧制度と比較して大幅な拡大であり、より多くの資産を非課税で運用する機会が広がります。

 

非課税期間の無期限化がもたらす影響

新NISAのもう一つの大きな特徴は、非課税期間が無期限となることです。旧制度では一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間と期間が限定されていましたが、新制度では期間の制限がなくなります。

 

この変更により、長期的な視点での資産形成がより有利になります。市場の短期的な変動に左右されず、長期的な成長を見据えた投資戦略を立てやすくなるでしょう。また、非課税期間の無期限化は、相続を見据えた資産形成にも大きな影響を与える可能性があります。長期的に資産を育てながら、次世代への円滑な資産移転を考える上で、新NISAは重要な選択肢となるかもしれません。

 

相続時のNISA口座の取り扱い

NISAは個人投資家の資産形成を支援する制度ですが、口座保有者が亡くなった場合、その取り扱いには特別な注意が必要です。

 

NISA口座保有者が亡くなった場合の流れ

NISA口座の保有者が亡くなった場合、まず相続人は金融機関に対して「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。これは、被相続人の死亡を金融機関に通知し、NISA口座の閉鎖手続きを開始するためのものです。

 

この届出書の提出は、相続人が被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく行わなければなりません。提出が遅れると、手続きが滞る可能性があるため、速やかな対応が求められます。

 

相続人への資産移管の手続き

NISA口座内の資産を相続人の口座に移管する場合、「相続上場株式等移管依頼書」を金融機関に提出する必要があります。この手続きにより、被相続人のNISA口座内の株式や投資信託などの金融商品が、相続人の口座に移されます。

 

ただし、注意すべき点として、NISA口座内の資産を相続人のNISA口座に直接移管することはできません。相続人の一般口座か特定口座に移管されることになります。また、移管先の口座は、被相続人のNISA口座と同一の金融機関に開設されている必要があります。異なる金融機関の口座への移管は認められていないため、相続人は必要に応じて新たに口座を開設する必要があるかもしれません。

 

相続税評価におけるNISA口座内資産の扱い

NISA口座内の資産も、他の金融資産と同様に相続税の対象となります。相続税評価額の算定方法は、一般の上場株式や投資信託と同じです。

 

具体的には、相続が発生した日の終値、もしくは相続が発生した月の毎日の終値の平均額、相続が発生した月の前月の毎日の終値の平均額、相続が発生した月の前々月の毎日の終値の平均額のうち、最も低い価額で評価されます。

 

この評価方法により、相続税評価額が相続発生時の時価よりも低くなる可能性があります。ただし、相続税評価額が低くなったからといって、必ずしも相続税の負担が軽減されるわけではありません。相続財産全体の価額や法定相続人の数などによって、実際の相続税額は変動します。

 

NISAと相続|知っておくべき重要ポイント

NISAと相続の関係には、いくつかの重要なポイントがあります。これらを正しく理解することで、より効果的な資産承継の計画を立てることが可能となります。

 

NISA口座の相続可否と制限

まず押さえておくべき重要なポイントは、NISA口座自体は相続の対象とはならないということです。NISA口座は個人に紐づいた口座であり、その非課税のステータスを他人に引き継ぐことはできません。

 

被相続人のNISA口座内の資産は、相続人の一般口座や特定口座に移管されることになります。つまり、NISA口座の非課税メリットは被相続人の死亡時点で失われ、相続後は通常の課税口座として扱われることになります。

 

また、NISA口座内の資産を相続人のNISA口座に直接移管することもできません。これは、NISAの非課税枠を実質的に引き継ぐことを防ぐための制限です。

 

相続時の含み益と配当金の税務上の取り扱い

NISA口座内の資産を相続する際の税務上の取り扱いには、特殊な点があります。被相続人の死亡時点でNISA口座内の資産に含み益がある場合、その含み益は非課税となります。つまり、被相続人が購入した時点から死亡時点までの値上がり益に対しては課税されません。

 

しかし、相続後の値上がり益については、一般の口座と同様に課税の対象となります。相続人が資産を売却する際には、被相続人の死亡時点の価額が取得価額となり、それ以降の値上がり益に対して課税されることになります。

 

また、被相続人の死亡後に発生した配当金や分配金については、NISA口座の非課税措置は適用されません。これらの収入は、相続人の課税所得として扱われます。

税務面について詳しくは税理士に確認してください(弊事務所が提携している税理士をご紹介することも可能です。)

相続後のNISA資産運用における注意点

相続によってNISA口座から移管された資産を運用する際には、いくつかの注意点があります。

 

まず、移管された資産は通常の課税口座で管理されることになるため、売却益や配当金に対して課税されます。そのため、相続人は税負担を考慮した運用戦略を立てる必要があります。相続人自身がNISA口座を持っている場合でも、相続した資産をそのNISA口座に移すことはできません。新たにNISA口座で投資を行う場合は、別途資金を用意する必要があります。

 

また、相続した資産の評価額や取得時期によっては、売却のタイミングや方法によって税負担が大きく変わる可能性があります。そのため、税理士や金融機関のアドバイザーに相談しながら、最適な運用方法を検討することが重要です。

 

まとめ

NISAは個人の資産形成を支援する有効な制度ですが、相続との関係では複雑な側面があります。NISA口座自体は相続できませんが、口座内の資産は相続税の対象となります。相続時の含み益は非課税ですが、相続後の運用益には課税され、相続したNISA資産は相続人の一般口座や特定口座に移管されます。

 

NISAを活用した資産承継では、生前贈与との組み合わせや他の資産承継手法との併用を検討することが重要です。長期的な視点で計画を立て、税制変更にも注意を払う必要があります。資産承継や相続対策は個々の状況によって最適な方法が異なるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

 

当事務所では、NISAを含む資産承継や相続に関する幅広い相談に対応しています。相続手続きはもちろん、遺言書作成や生前贈与のアドバイス、さらにはNISAを活用した資産形成戦略の立案まで、お客様一人ひとりの状況に合わせた丁寧なサポートを提供しています。NISAや相続に関する疑問、また将来の資産承継に不安がある場合は、しもいち事務所までお気軽にご相談ください。