相続手続きの期限を過ぎるとどうなる?手続きの方法を解説

相続手続きには様々な期限が存在します。期限を過ぎてしまうと、税制上の不利益を被ったり、手続きが長期化・複雑化したりするリスクがあります。この記事では、相続手続きの主な期限と期限を過ぎた場合のデメリット、円滑な手続きのためのポイントについて解説します。ぜひ参考にしてください。

 

相続手続きの主な期限

 

相続手続きには、被相続人の死亡後に決められた期限内に行わなければならないものがいくつかあります。ここでは、主な期限について見ていきましょう。

 

死亡を知ってから7日以内にすべきこと

被相続人の死亡を知ってから7日以内に行う必要があるのが、死亡届の提出と埋火葬許可申請です。死亡届は、被相続人の死亡の事実を役所に届け出る手続きとなります。埋火葬許可申請は、遺体を埋葬または火葬するための許可を得る手続きです。これらの手続きは、葬儀を行う前に済ませておく必要があります。

 

死亡届の提出先は、被相続人の住所地の市区町村役場です。死亡届の用紙は役所で入手できます。記入事項は、以下の通りです。

 

  • 亡くなった人の氏名
  • 生年月日
  • 死亡の年月日・場所
  • 届出人の氏名・住所・続柄

 

埋火葬許可申請も、死亡届と同じく被相続人の住所地の市区町村役場に提出します。申請書には以下の内容を記載します。

 

  • 亡くなった人の氏名
  • 生年月日
  • 死亡の年月日・場所
  • 埋葬または火葬の予定日時・場所
  • 申請者の氏名・住所・続柄

 

死亡後14日以内にすべきこと

被相続人の死亡後14日以内には、以下の手続きを行います。

 

国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失届の提出 被相続人が加入していた健康保険の窓口に提出します。亡くなった人の保険証、印鑑、届出人の本人確認書類などが必
介護保険の資格喪失届の提出 被相続人が住民票を置いていた市区町村の介護保険担当窓口に提出します。亡くなった人の介護保険被保険者証、印鑑、届出人の本人確認書類などが必要
年金の受給者死亡届の提出 年金事務所または市区町村の国民年金担当窓口に提出します。亡くなった人の年金証書、死亡を証明する書類、届出人の本人確認書類、預金通帳などが必

 

  • 国民健康保険、後期高齢者医療制度の資格喪失届の提出
  • 介護保険の資格喪失届の提出
  • 年金の受給者死亡届の提出

 

これらの手続きを行わないと、被相続人が亡くなった後も保険料が請求され続けたり、年金が支払われ続けたりする可能性があります。

 

死亡を知った時から3ヶ月以内にすべきこと

被相続人の死亡を知った時から3ヶ月以内には、相続人は「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択します。

 

単純承認 被相続人の財産をすべて引き継ぐ
限定承認 相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済する
相続放棄 被相続人の財産を一切相続しない

 

限定承認と相続放棄を選択する場合は、家庭裁判所に申述しなければなりません。期限内に手続きを行わないと、原則自動的に単純承認したとみなされます。

 

死亡を知った時から4ヶ月以内にすべきこと

被相続人に所得があった場合、死亡を知った時から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。準確定申告とは、1月1日から死亡した日までの所得について、相続人が被相続人に代わって行う確定申告です。

 

準確定申告が必要となるのは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの期間に所得があった場合が対象となります。たとえば、被相続人が事業所得者であった場合や公的年金を受給していた場合です。

 

準確定申告は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。申告書には、亡くなった人の所得や控除などを記入し、原則相続人全員の署名・押印が必要です。

 

死亡を知った時から10ヶ月以内にすべきこと

被相続人の財産に基づいて相続税の申告と納税を行う必要がある場合、原則として死亡を知った時から10ヶ月以内に手続きを済ませなければなりません。相続税の申告と納税は、相続人全員の連帯納付義務となります。

 

相続税の申告が必要となるのは、被相続人の遺産総額が基礎控除額を超える場合です。基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。たとえば、被相続人の子供が2人いる場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円となります。

 

相続税の申告と納税は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署で行います。申告書には、相続財産の明細や相続人の情報などを記入し、原則相続人全員の署名・押印が必要です。

 

その他の期限

上記以外にも、被相続人の死亡保険金の請求(死亡を知ってから3年以内)や遺留分侵害額請求(死亡を知ってから1年以内)など、相続に関連する手続きの期限は多岐にわたります。

 

死亡保険金の請求は、被相続人が生命保険に加入していた場合に、受取人が行う手続きです。多くの場合、保険会社に請求書を提出して必要書類を揃えることで、死亡保険金を受け取ることができます。

 

遺留分侵害額請求は、被相続人の遺言によって相続分が著しく少なくなった相続人が、最低限の取り分(遺留分)を主張するための手続きです。遺留分を侵害された相続人は、侵害額を請求することができます。

 

期限を過ぎるとどうなる?

相続手続きの期限を過ぎてしまうと、様々なデメリットが生じる可能性があります。

 

税制上の不利益

相続税の申告と納税が期限内に行われなかった場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。無申告加算税は、本来納めるべき税額の15%〜20%が上乗せされます。延滞税は、納付すべき税額に対して年率8.9%(利用水準に応じて変動)が課されます。

 

また、期限内に遺産分割協議が整わないと、配偶者控除や小規模宅地等の特例といった税制上の優遇措置を受けられなくなる可能性もあります。配偶者控除は、一定の条件を満たす配偶者が相続した財産について、最大1億6,000万円まで相続税が非課税となる制度です。

 

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす土地等について、相続税の課税価格を最大80%減額できる制度です。

 

過料の支払い

相続登記は被相続人の死亡を知った時から3年以内に行うことが義務化されています(2024年4月1日施行)。期限内に登記申請を行わなかった場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。

 

手続きの長期化と複雑化

相続手続きを放置していると、新たな相続が発生したり(相続した人が亡くなった場合)、関係者の連絡先が変わったりと、手続きがより複雑になるリスクがあります。相続人の中に認知症の方がいたり、相続人同士の仲が悪かったりすると、手続きがさらに難航する可能性があります。

 

また、相続手続きを長期化させてしまうと、預貯金口座の凍結が長引いたり、不動産の管理費用がかさんだりするなど、経済的な損失も生じかねません。

 

円滑な相続手続きのために

相続手続きを円滑に進めるためには、以下の点がポイントとなります。

 

期限管理の重要性

相続手続きの期限を正確に把握し、期限を守ることが何よりも重要です。手続きをスケジュール化し、計画的に進めていきましょう。

 

期限を管理するためには、カレンダーやスマートフォンのアプリを活用するのも一つの方法です。期限の1ヶ月前、1週間前、前日などにアラームを設定しておくと、うっかり忘れずに済みます。また、相続人同士で情報を共有し、手続きの進捗状況を確認し合うことも大切です。

 

専門家に相談することのメリット

相続手続きは複雑で専門的な知識を要する場合が多いため、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。初回相談無料の事務所もありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

 

司法書士は、相続手続きに関する幅広い知識を持っており、相続人の立場に立って適切なアドバイスをしてくれます。司法書士に相談することで、手続きを円滑に進められるだけでなく、トラブルを未然に防ぐことができます。

 

必要書類の早期準備

戸籍謄本、除籍謄本、住民票、印鑑証明書など、相続手続きに必要な書類は早めに集めておきましょう。特に、古い戸籍や除籍を取り寄せるのに時間がかかるケースもあります。必要書類の一覧を作成し、誰がどの書類を取得するのか、役割分担を決めておくと効率的です。

 

司法書士に依頼すれば、戸籍等の取得を代行してもらうことも可能です。

 

また、被相続人の預貯金口座の通帳やキャッシュカード、不動産の登記簿謄本、遺言書などの重要書類は、早めに探しておくことをおすすめします。

 

まとめ

相続手続きには様々な期限が存在し、その期限を守ることが重要です。期限を過ぎてしまうと、税制上の不利益を被ったり、手続きが長期化・複雑化したりするリスクがあります。円滑な相続手続きのためには、期限の管理を徹底し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。必要書類も早めに集めておきましょう。

 

もし相続手続きについてお悩みのことがあれば、ぜひ司法書士にご相談ください。私たち司法書士法人しもいち事務所では、相続手続きに関する豊富な経験と知識を活かし、皆様をサポートいたします。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。